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前日談 6.旦那様と奥様の愛情(中編)

last update publish date: 2026-08-22 18:16:29

「貴族というのは子どもにお金をたかるものなのかしら?」

「は? そいつは成人だろ」

「子どもの振りして寄付から逃れようっていうのか?」

「あなた方がいつリチャードを成人扱いしたのですか?」

「実際に成人だろ」

 その言葉を聞いた奥様が周りを見回しながら問いかけます。

···············

 その言葉に周りは黙り込みました。

「リチャードを成人と認めてくださる方はいらっしゃいますか?」

 奥様がさらに問いかけても誰も反応しません。

 旦那様の友人の方も声を出されませんが仕方ありません。

 下手に発言すれば主催の貴族たちに目をつけられます。

「誰も成人と思っていないようですが?」

 主催の貴族たちに向き直り改めて問いかけられましたが返答はありません。

「平民風情が出しゃばるな!!」

「そうだ、ここは平民が話す場ではない!!」

「どうせ金目的で子豚のものを咥えこんだんでしょう、汚い淫売が」

 主催の貴族が黙ったことでここがご機嫌取りの機会だと思ったのでしょう。

 周りにいる夫人たちが口汚い言葉で旦那様と奥様を罵ります。

 しかし奥様はその言葉を無視して問いかけます。

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  • どんな姿であっても愛しています   前日談 6.旦那様と奥様の愛情(中編)

    「貴族というのは子どもにお金をたかるものなのかしら?」「は? そいつは成人だろ」「子どもの振りして寄付から逃れようっていうのか?」「あなた方がいつリチャードを成人扱いしたのですか?」「実際に成人だろ」 その言葉を聞いた奥様が周りを見回しながら問いかけます。「誰がそれを認めているのですか?」 その言葉に周りは黙り込みました。「リチャードを成人と認めてくださる方はいらっしゃいますか?」 奥様がさらに問いかけても誰も反応しません。 旦那様の友人の方も声を出されませんが仕方ありません。 下手に発言すれば主催の貴族たちに目をつけられます。「誰も成人と思っていないようですが?」 主催の貴族たちに向き直り改めて問いかけられましたが返答はありません。「平民風情が出しゃばるな!!」「そうだ、ここは平民が話す場ではない!!」「どうせ金目的で子豚のものを咥えこんだんでしょう、汚い淫売が」 主催の貴族が黙ったことでここがご機嫌取りの機会だと思ったのでしょう。 周りにいる夫人たちが口汚い言葉で旦那様と奥様を罵ります。 しかし奥様はその言葉を無視して問いかけます。「あなた方はどのくらい寄付をされるのですか?」 夫人たちの言葉が詰まりました。 おそらく寄付はしていないのでしょう。 普段から見ていても寄付をしているのは旦那様だけです。「まさか平民以下ということはありませんよね?」「平民を嫁にするような格下の貴族だから寄付してるのよ!!」「そうよ、格が足りないから金で補ってるだけ!!」「つまり格はお金で買えると言っている訳ですね」「は?」「補うことが出来るなら結果としては等しくなりますよね?」 奥様の言葉に周りの貴族のみならずわたくしも驚いています。 そのような発想自体ありませんでした。「な、な、何言ってるの、格の違いはお金なんかで補えるわけないでしょ!!」「金、金、金、ってあさましい」 先ほどまでと言っていることが違います。 格が足りないというのはどこにいったのでしょうか。「つまり寄付に意味はないと?」「招いてあげてるんだからせめて金ぐらい出すべきよ」「そうよ、参加料よ」「なるほど、みなさん寄付ではなく参加料であるという認識なのですね」 奥様の声が少し高くなりました。 これは奥様が怒っているときの癖

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     どうしましょうか。 突然の旦那様の願いに戸惑いを隠せません。 ジョゼット様の件以降、旦那様は婚約者をお作りになりませんでした。 相手が明らかに財産目当てだったのもありますが一番は旦那様が興味を持ちませんでした。 『僕が好きになった人と結婚したい』とおっしゃる旦那様はよほどジョゼット様のことが尾を引いていると思われます。 そんな旦那様が結婚なさるおつもりだと言うのは非常に喜ばしいことです。 ただ相手が平民となると話が変わります。 平民と貴族は住む世界が違います。 それは身分の差と言う意味だけでなく魔力の有無という意味もあります。 貴族の世界は魔力があることを前提に作られています。 わたくし達のような平民では呼び鈴すら鳴らすことができません。 もし平民が妻となれば社交で問題が出ることでしょう。 ただ先ほどの様子だと既に覚悟を決めておられるようです。 ……ならば使用人としては最善を尽くすのみでしょう。「分かりました、さっそく調べてまいります」・・・ 数日である程度情報は集まりました。 名前はリタ様と言うそうで旦那様と同い年の結婚経験なし。 明るく優しく聡明な方で結婚していないのが不思議だとか。 妾であれば文句のない相手なのですが……。 旦那様に報告すると『すぐにでも挨拶に行く』とのことでした。 よほど待ちきれないのでしょう。 準備を整えて彼女の住む家に向かいます。「いきなり貴族の嫁になると言うのは大変でしょうが、必ず幸せにします」 それを聞いた彼女は興味深そうな目で旦那様を見ていました。 彼女の印象は悪くありませんね。 ただ家族の方はひどいものです。 彼女の母は得体の知れないものを見る目だったし彼女の姉に至っては嫌悪感を隠しもしない。 旦那様がひどい貴族であれば何らかの処罰を受けていたでしょう。「断っても不利益が生じることはない」 その言葉で彼女の母が安堵したのがわかります。 大事な娘を無理やり奪われると思ったことは理解できますが旦那様の誠意を理解していないことには腹立たしさを感じます。「少しお時間をいただけないかと」「わかった、しっかり考えてほしい」 旦那様は食い下がることなくその場を後にしました。 旦那様の雰囲気だと断られた時は素直に諦めてしまいそうです。 しかしここまで気に入られているなら妻

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     それから数年。 婚約の話は何度も来ていたが全て断っていた。 女性が財産目当てに媚びてくる姿があまりに悲しかったからだ。 ジョゼットは一度もそんな態度をしなかった。 お金ではなく僕の方を見てくれた。 もし結婚するならそんな相手であってほしい。 そして今度こそ自分が愛を与える側になりたい。 そんな相手を探していたある日のことだった。 その日は偶然が重なった。 たまたま馬車の幌が一部壊れていたこと、たまたま鳥の糞が落ちてきたこと、たまたまそれが幌の隙間を縫って落ちてきて僕の服についたこと。「運が悪いなぁ」「申し訳ございません、壊れた馬車に乗せたわたくしの責任です」 無表情に見えるけどよく見ると若干眉をひそめて下唇を噛んでいる。 よほど責任を感じているのだろう。「アナのせいじゃないし他の誰のせいでもないよ」「旦那様、ですが……」 こんなことで誰かを責めて何になるのか。 それに最終的に僕がいいと言ったのだから僕の責任だろう。「ちょうどそこに店があるし代わりを買おう」「……わかりました、すぐ交渉してまいります」 少しためらっていたけど承諾してくれた。 これでいい、そんなに気にすることじゃない。「貸し切りには出来ませんでしたがなんとか使えそうです」「よかった」 本当は貸し切りの方が迷惑にならないと思うけど店側がいいというなら構わない。 みんなを連れて店に入ると店員が怪訝な目で見てきた。 初めての店だから僕の姿に驚いているのだろう。 いつものことだ。「旦那様?」「いいよ、初めてのお店だし」 店員の怪訝な目にアナが気づいたけどたまたま通りがかった店に対してそこまでする必要もない。 貴族に慣れている店ならそういう反応を見せないものだけどここはあまり慣れていないんだろう。 建物の奥側に案内されて服を試着していく。 とりあえず家に帰るまで持てばいいのだからなんでもいいのだけど、アナ含めメイド達が『似合うものしか駄目です』と言っていた。 おかげで何着も試着している。 まあみんな楽しそうに選んでくれているのでいいか。「何あれ? 気持ち悪っ」「しっ、お貴族様だよ、下手なことを言うと首はねられるよ」「怖っ、え、聞こえてないよね?」 悪口と言うのは存外遠くまで聞こえるものだ。 かなり離れた入り口付近の店員が話している

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     お父さんとお母さんが長い旅に出かけてから少し経ったある日。「坊ちゃま、今日はわたくしの孫を紹介いたします」「アナスタシアです、よろしくお願いいたします」 すごくきれいでおとなしい女の人だ。 まごってばあやの家族ってことだよね? ええとこういう時はほめた方がいいってお父さんが言ってた。「ばあやのまごだからきれいだね」「おっほっほ、坊ちゃんはお世辞が上手ですね」 頭をなでてくれた。せいかいだったみたい。 あなすたしあさんもニコニコ笑ってる。 わらうとすごくびじんさんだ。 僕より大きく見えるけどいくつぐらいなんだろう?「あなすたしあさん?」「さんはいりませんのでアナとお呼びください」「え、僕よりお姉ちゃんじゃないの?」「主従関係はリチャード様の方が上になりますから」「ならぼくのことはリチャードって呼んでほしいよ」「それは……」「構いませんよ、アナスタシア。ただし家族の中だけです」 アナがちょっとこまっていたけど、ばあやからはおゆるしをもらえた。 せっかくともだちになるならあんまり気をつかってほしくない。「分かりました、リチャード」・・・ アナはぼくより5つ上で、なんでも知っていてこまった時はいつも助けてくれる。「アナー」「なんですか、リチャード」「ほんがとれない」「わかりました……、あら、この本は」「アナとおなじほんよみたかったんだ」 そう言うとうっすらと笑って頭をなでてくれた。 お姉ちゃんがいたらこんな感じなんだろうな。「アナスタシアは綺麗ね」「そうだよね」 こんやくしゃ?のジョゼットもほめている。 ちょっとうらやましそうな顔をしているけどジョゼットもとてもかわいいので気にしなくていいと思う。「リチャードも懐きすぎよ」「だって……」「ジョゼット様の言う通りでございます、わたくしよりジョゼット様と仲良くしてください」「大丈夫、アナもジョゼットも大好きだから」「何が大好きなのよ」 アナはジョゼットといっしょにいるといつもこうだ。 話しかけても全然相手してくれないし、いっしょにあそんでもくれない。 しょうらいジョゼットとふうふになったらずっとこんなかんじならいやだな。・・・数年後。 今日は婚約者のジョゼットが来ている。 両親がいたころに決めた相手で、そのころはとても仲が良かった。

  • どんな姿であっても愛しています   2. 違和感

     食堂に入ると予想通りリチャードがそこにいた。「おはようございます、リチャード」「っ、あ、ああ、おはよう」 少し驚いた顔をしている彼が私の旦那様だ。 かなりの小柄で丸顔の太った体。 女性と比べてもさらに小さくて子どものような大きさ。 本人はすごく気にしているけど私はかわいいと思っている。 手にはコップを持っている。 リチャードは朝食前に必ずミルクを飲むのでまだ朝食を済ませていないんだろう。 一緒に食べることが出来ると思い椅子に座ろうとするとリチャードが私を抱きしめた。「リタ……よかった……」 そう言って背伸びして唇を合わせてくる。 なんとなくいつもと唇の感触が違う。 

  • どんな姿であっても愛しています   1. 目覚め

    「奥様、もうお時間ですよ」 メイド長のアナスタシアの声で目が覚める。 嫌な夢だった。 体がばらばらに引き裂かれる夢。 手足がちぎれていく感覚はものすごく生々しくて、起きた今でも思い出せる。 思わず体を身震いさせてしまう。「どうされましたか?」「なんでもないの、アナが起こしに来るなんて珍しいわね」「ちょっと事情がございまして」 少し困った表情をしているので何かあったのだろう。 普段ならスフィーナやイリーシャが起こしに来るはずで、わざわざアナが起こしに来る必要なんてない。「それにどうしてこんなに真っ暗なの?」 あまりの暗さで夜かと思ってしまった。 窓を見ると外側から何か

  • どんな姿であっても愛しています   6. 逆転

    「私は自分が死者だと気づいていなかった」「は? 何言ってる、彼に『私はもう死んだ』と言っていたじゃないか」「『私はもう死んだ"と思って"諦めて』としか言っていない」 ちょっとした言い回しの違い、それは契約においては致命的な違いとなる。 でも魔術師はそれに気づいていない。「その前にも鼻を触っていただろう? 存在しなくなった鼻を」「そう、てっきり事故でなくなったんだと思ってた」 実際はそこで蘇生されたと気づいていた。 でもそれは客観的に証明できない。 だって私は何も言っていないから。「死んだ"と思って諦めて"と言っている時点で死んでいるとは言っていない」「は?」「あなたが

  • どんな姿であっても愛しています   5. 契約

     事故後に初めて食堂に言った時、リチャードが「事故にあった」「よかった」と言っていた。 あの時のリチャードには驚きと喜びがあった。 私の顔の変化に対する驚きと私が生きていた喜びと考えれば辻褄が合う。 でもこれだけの怪我をしているのに、私に痛みはないのはなぜだろうか? 体を見せない、突然の改築、全身のだるさ、食欲のなさ。 軽く手をつねってみる。 まったく痛みを感じない。 総合的に考えて導き出される結論は……。 そうか、私は事故で死んだのか。 そして何らかの方法で生き返らされた。 ……死者蘇生。 魔術師と呼ばれる存在が使うことが出来る秘術。 死んだものを生き返らせて

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